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「俺はバイクで走るのが好きなんだ。乗って、走って無いと生きていけない。ずっと走ってたいんだ。」 道端でバイクを止めて、男は前を見たまま話し出す。 「だから、また走りたい。そして色んな土地を見てあるきたい・・・ずっと。」 ・・・とうとう来たか。 女は恐れていた言葉を聞き、寒さに震える。 それは先ほどまでの寒さとは違う、心の中から生まれた風だった。山から下りてくるあの風よりも、冬の北風よりも強い風が。 「そう・・・。じゃあ、一人で走っていってしまうのね。」 小さな声、彼の背中に向って呟く女。 だが、彼は振り向いて微笑むのだった。 「でも、バイクにはシートが二つあるんだ。・・・どうだ、座り心地は?」 |