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季節外れの避暑地。 そんな所に来るのはそこに住んでいる人間に用事がある者か、ただそこを通過するだけの者である。 薄暗い昼間の景色に閉ざされたそこは、世界全体が色を無くした寂しさを漂わせる狭い空間となって人々を閉じ込める。 だが、冬が明ければ春は来る。 そんな想いだけを胸に抱き、凍り付くような寒さの中での日常を過ごす、そんな日。 その日もそんな朝だった。 いつものように病院に出勤した若い看護婦が一本の電話の音を聞くまでは。 フロントから呼び出され、医者と一緒に行ったあまり上等で無いホテルの狭い一室。 そこにその男はいた。 転倒し、痛めた足をひきずってそこに辿り付いたという男だったが、さすがの彼にもそれが限界だったようだ。 医者は入院を勧め、看護婦は医者を手伝った。 男は診察を受けた。 それが始めの出会いだった。 男はオイルの臭いがした。 |